スマホやパソコンモニターと印刷物では、同じ色でも違って見える
Watanabe.Y
パワーポイントでキレイに資料をつくったのに
プリントしたら「鮮やかな色が、濁って見えるなぁ」
スマホでパンフレットの校正PDFを確認していたけど
印刷物ができて、見てみたら「写真の色味が違うような」
色にこだわったウェブサイトを作ったけど
スマホとパソコンモニターで見比べてみると「あれれ!? 色が違う…」
なんか違う!色が違う!
このような経験はありませんか?
そうなんです。
スマホやパソコンモニター、プリンター、印刷物、どれも完全に色味を同じにすることは不可能なのです。
その理由をできるだけかんたんに説明していこうと思います。
モニターと印刷では、色の表現方法が違う
スマホやパソコンモニターと印刷とでは、そもそも色の表現方法が違います。
スマホやパソコンモニターはR(レッド)G(グリーン)B(ブルー)という通称RGBと呼ばれる光の3原色で表示。
一方印刷は、オフィスや家庭用プリンターでも使われるC(シアン)M(マゼンタ)Y(イエロー)で表現。
この3色だけでは深みのある黒が再現できず、写真や文字の輪郭のシャープさが無くなることから、K(スミ)を加えます。
RGBとCMYKの違いは、よくスポットライトと絵の具に例えられます。
スポットライトは全てのスポットライトが一点に集中すると、白色に。
光は、混ぜるほど色は明るくなり鮮やかさが増します。
一方、絵の具は、混ぜれば混ぜるほど色は濁り、黒に近づいていきます。
モニターと印刷の比較で感じる色の差は、スポットライトに比べて絵の具は色の再現できる領域が狭いため発生してしまいます。
スマホやパソコンモニターといった同じRGBによる表示するデバイスであっても機種により個体差があり、見ている環境によっても色は大きく変わってきます。
カラーマネジメントシステム
このような色に関する課題を、クリエイティブの現場では「カラーマネジメントシステム」で管理しています。
カラープロファイルという色情報をデータに埋め込んで、正しい色を次工程に伝え、撮影・デザイン・フィニッシュまで色を統一させようという技術です。
日本の印刷業界では「Japan Color」というカラープロファイルが標準印刷色として運用され、WEBであれば汎用性のある「sRGB」を使うのが一般的です。
sRGBプロファイルを画像データに埋め込むことで、モバイル上でも制作者が意図した色を正しく表示されます。
さらにWEBサイト構築にあたっては「WEBセーフカラー」と呼ばれる216色で制作することで、OSやハードウェアなどの環境による色の差異を最小限に抑えることができるとされています。
例えばiPhoneで撮影された画像での入稿。
意識することはありませんが「Display P3」というApple規格のカラープロファイルが埋め込まれています。
色情報はしっかり現場に伝わり、フィニッシュに合わせた処理がなされているのです。
色のコミュニケーション
プロの人たちがそこまでしてるのに色が違うのはなんで?
当然の疑問です。
冒頭の、パワーポイントなどOffice系ソフトの色指定はRGBなので注意が必要です。
鮮やかな色をつけがちですが、CMYKで表現できる領域を越えた発色の良い色ほど、プリント・印刷したときのギャップが大きくなります。
RGBとCMYKの色領域の差は語彙力とも言えますね。
デバイス間の色の違いは話す言葉の違い。
色のコミュニケーションのために、違った言語を翻訳する仕組みがカラーマネジメントシステムと言えます。
同じRGB表示のスマホやパソコンモニターの色の差は方言と例えるとわかりやすいでしょうか。
このように色の課題を技術的な面ではコントロールできるものの、見ている場所や時間帯、見たひとのその時の感情によっても左右されると言われる色。
CMYKが表現できる語彙に合わせた色処理が上手なコミュニケーションのコツ。
色の世界は奥深いのです。
なにやら組織の運営にも通ずるような。。。
あーあ、けっきょく難しい説明になってしまった。
スマホやパソコンモニター、プリンター、印刷物は、色が違う!
(けっきょくこの一言に尽きるのか!?)
なんども言ってしまいますが、色の世界は奥深いのです。
余談ですが、色の認識能力には個人差があります。
女性は1色が細かくはっきり見えて、男性は大まかな色しか見えず、同じような色は一括りで1色と認識していう研究結果もあるそうです。
買い物に行って女性が洋服を選ぶときに「どっちがいい?」と尋ねて、男性が「どっちも一緒でしょ?」と言って喧嘩になるという話、よく聞きますね。
同じポスターをいっしょに眺めていても、お隣の人とはとらえている色は違っているんでしょうね、きっと。
ちなみに、女性は色の違いを見分けることに優れ、男性は素早く動く物体を目で追ったり、遠くの細かいものを見分けたりすることが得意なのだそうです。
できること、できないこと、得意なこと、不得意なこと、それぞれわかっていると衝突も少なくてすむのかもしれません。