遠心力と求心力
Watanabe.Y
「知的資本論」より
「私が理想とする組織は、つまりイワシの群れだ。イワシは魚ヘンに弱いと書くほど、一尾では非力な魚だが、その非力さを補うために群れで回遊している。そして例えば大型の魚に襲撃されたとき、群れはそれ自体がまるで一つの生き物であるかのように集団を保ったまま、頻繁に方向を変えて襲撃をかわそうとする。一尾一尾は独立した別々の存在であり、特に群れを統率するリーダーがいるわけでもないのに、群れの中にあってそれらは統一した行動を取り、集団がはらけることがない。これこそが、これからのビジネスの単位となるべきものの姿だろうと私は思う。
そしてそれが可能になるのは、組織の中に遠心力と求心力が有機的に働いている場合だけだ。遠心力だけでは組織はバラバラになり、まとまって力を発揮できない。求心力だけでは組織はお互いの顔色をうかがい合う集団となって、有効な企画を打ち出せない。
企画会社ち当てはめれば、遠心力が向かうのは顧客だ。そして求心力が向かうのは仲間だ。スタッフ一人ひとりが、顧客に引かれる力と仲間に引かれる力を同じように持つことによって、イワシの群れの機動性を具現化することができる。
だから、やはり自由と愛だと思う。自由は遠心力を生み、愛は求心力に対応する。愛を信頼や共感という言葉に置き換えてもいいだろう。ともかく、そうした価値観を持ち続けることができる人こそ、ヒューマンスケールの組織のスタッフとして、ふさわしい人だ。」