想像力と創造力 羽生善治著「直感力」から
Watanabe.Y
人は慣性の法則に従いやすい。新しいことなどしないでいたほうがラクだから、放っておくと、ついそのまま何もしないほうへと流れてしまう。
意識的に、新しいことを試みていかないといけないと思う。
将棋に限らずこの世の中、未来永劫安定しているものなど基本的にはない。完結形といったようなものもまるでない。あらゆることが、日々、変わっていく。
そのとき、その変化に気づくことができるか。
じっと見ていてもすぐには何も変わらないように見える。しかし、釣った魚と同じで、変わらないように見えて、それは間違いなく腐っていく。
時の経過が状況を変えてしまうからだ。いまは最善だと思われても、それは「いま」という時点の話であって、いまはすでに過去になりつつある。
これから先に進んでいくためには、できれば少し先を見ることができるといい。現実に本当に見ることなどできはしないが、過去から現在の変化を見ることはできる。そして、その変化の延長線上に、想像力を働かせることはできる。
想像力とは、まだ起こっていない、しかし起こるであろう現象を、リアリティをもって受け止める力のことだ。
どんなことでもいい。これまでとの違い、昨日からの変化を見つけてみる。そして、その先を思い描いてみる。そうすることで、想像力が鍛えられていく。
そして、その想像力を働かせて頭の中に描いた何かを具体的に実現させるアイデア・発想が創造力だ。
大事なのは、これらの力を養おうとすること。日々の事象に変化を見つけ、そのさきを想像してみる。そして一歩進んだら、それを具現化するものを創造してみる。それがかたちになったら、またその先を想像して……を繰り返すのだ。
こうして想像力と創造力の両輪を回しながら、進んでいく。