思考が刺激されるオウィディウスの「変身物語」
Watanabe.Y
蝋の翼で空を飛び、太陽に近づきすぎて翼が溶け、ついには海に墜落して命を落としすイカロス。
自分の姿に恋し、水に映った自分を見つめ続けて命を失うナルキッソスと、彼への愛に絶望して声だけを残すエコー。
知恵と戦略の女神アテナに罰せられ、髪が蛇に変わり、見る者を石にする怪物となったメデューサ。
自ら彫った理想の女性像に恋するピグマリオン。
亡き妻エウリュディケを冥界から連れ戻そうとするが、約束を破り振り返ってしまい、彼女を失うオルペウスの物語。
オウィディウスの「変身物語」は、ギリシャ・ローマ神話を題材にし、登場人物は、なんらかの理由で動物や植物、星座などに変身してしまいます。
ここに描かれているのは、すべてが暗示の世界なのだろうなと思います。
だから、わたしたちの精神世界でも起こっている。
どんな人でも、多種多様な面があって、一面から見ればいわゆる、いい人であっても、別な面からみれば非情で冷酷であったり、理路整然としているような人があることをきっかけに感情がコントロールできず狂乱してしまったり。
それが「変身」。
いつ読んでも、想像力の豊かさと詩的な表現に、思考が刺激されます。