込められた思い 〜家紋と社章〜
人生楽ありゃ苦もあるわけで
こちらのマークをご存知ですか?
40代以上の方ですと、右側のマークを見るだけで、頭の中にテーマ曲が流れ出し口ずさんでしまう、時代劇でお馴染みのあの「紋所(もんどころ)」ということがわかるかもしれません。
左から、織田(信長)、豊臣(秀吉)、徳川(家康)のマーク(家紋)です。
戦国時代、これらの家紋を鎧や兜、のぼりに記し、数々の戦で実績をあげることで家紋のデザインは多くの人に影響を持つようになり、次の太平の世では、立ち回り中に薬入れ(印籠)に入っているマークを見せただけで、騒ぎが収まってしまう「目に入らぬか」状態を起こしてしまうのです。
家紋は、戦での敵味方の識別や、士気の高揚、意識統一に利用されましたが、実は現代において、この家紋の機能を引き継いでいるものがあるのをご存知ですか?
それが「社章」です。
日本独自の文化と世界への拡がり
社章とは、会社や企業に属する社員が胸につけるシンボルマークをかたどったピンやバッジのことです。
銀行では行章と呼び、ドラマなどで見る弁護士や弁護士など業種としてつけるバッジも広義の意味で社章と言えます。
最近は彩り豊かなSDGs(持続可能な開発目標)のバッジをつける方も多く見られ、志同じ者がつけるという意味ではこちらも社章の一部かもしれません。
実は、この社章という文化、海外ではあまり見られず、ほぼ日本の文化のようです。
社章の起源が軍隊という話もありますが、海外に社章があまりないことや、江戸時代の金属でかんざしや装飾品を作る仕事人「飾り職人」が社章作りの一つのルーツと言われていることから、日本に社章が根付いているのは多彩な家紋文化があったからという方が自然です。
ちなみに、某LVでおなじみの高級ブランドのロゴや印象的なデザインは日本の家紋からヒントを得たものと言われています。
そんな日本独自ともいえる文化の家紋と社章ですが、数年前、日本マイクロソフト社が独自で作成していた社章を、その本国アメリカのCEOが気に入り公の場で付け出したことが話題になりました。
実際、海外から社章製作の注文が増えているようで、いずれ世界で流行し、逆輸入の形で日本でも流行する日が来るかもしれません。
社章について
小さな社章ですが、先に述べた家紋と同様、多くの機能、メリットがあります
【メリット】
□身分の証明/信頼と安心
身に付けることで身分証明の役割を担います。
ひと目でわかるのでお客さまや周囲の安心を得ることができます。
ひいては社章をつけた社員の行動により、扱っている商品、サービスのイメージアップにつながります。
□会社の人間としての自覚
社員であることを自然と自覚し、会社の名前を背負っているという感覚を持つことで、社会人としての行動を自発的に起こそうと心がけるようになります。
□共通意識
自分だけではない、同じ志を持つものとしての団結する意識が高まります。
□認知度
対外的な仕事をする社員が身に付けることで、取引先の認知度が上がり、結果として業績をアップさせる一助になります。
社章を製作するにあたって、素材や作成方法がいろいろありますので、会社のイメージ、ロゴをどのように見せたいかなどを十分に検討してから決めるのがいいかと思います。
【製作のポイント】
□デザイン
基本は会社のロゴをそのまま用います。
ロゴが複雑だったり、色数が多い場合は社章用のロゴをデザインする場合があります。
□サイズ
スーツの胸元につけるのが一般的ですので、1.5cm前後がベストです。
形状は円形、楕円、正方形、長方形など様々。
ロゴをかたどった形にもすることができます。
□素材
一般的には真鍮(銅と亜鉛の合金)が多く使われます。
耐久性が高く、一方で加工もしやすいメリットがありますが、酸化しやすいため、金・銀などのメッキ加工を施し仕上げることが一般的です。
また、金や銀、プラチナを使用することも可能です。
□色
金属そのものや金銀のメッキを生かした金属的な色合いのほか、凹部分にカラーを入れることで彩りをつけたり、ガラスの粉を焼きつけ研磨することで伝統的な色合いを出す七宝仕上げなど様々です。
□裏金具
社章の裏面の金具も様々で、一般的な「ネジ」、針型の「タイタック」、簡単に取り付けられる「管(くだ)ピン」、挟むだけの「ワニ口クリップ」、衣服に傷を付けない「マグネット」などあります。
込められた意味
皆さんが会社や家のマークを作るとしたら、どんなデザインにしたいですか?
お気に入りのかっこいいデザインにしたいですよね。
ましてや戦国武将だったら、きっと強い力を持つ虎や龍、不動明王なんかのデザインにするんだろうなあ、
と思いながらはじめに見ていただきました家紋を改めてよく見ると、こちら全て植物です。
しかも、バラやユリなど華やかなものではなく、「木瓜(もっこう)」「桐(きり)」「葵(あおい)」と地味です。
戦国武将はこういった地味で雑草ともいえる植物を好みました。
それは、これらの植物の生命力、抜いても抜いても種を残し繁栄する力に子孫繁栄の願いを込めて家紋にしたと言われています。
戦に勝つことも大事ですが、何より永く家が繁栄することが最も大事と考えていたのでしょう。
会社のロゴも、思いが込められたデザインです。
その思いを胸に記すことで、社章はより意味を持ち、兜や鎧のような輝きをと放つと思います。
これを機に社章を検討してみてはいかがでしょうか。
新しくロゴを作ってみるのも一考かもしれません。
〈Copywriter・Hiroaki Munakata〉