コラムColumn

飴はどっち? 行動心理学とマーケティング

Watanabe.Y

飴はどっちにはいってる?

私の子供が小さい頃、どちらの手に飴が入っているかのゲームをよくしました。
彼の目は握られた私の両方の手を見比べて、飴がどちらに入っているか、その可能性をよく吟味しています。
片方の手を少しモゾモゾしてみたり、握り直すようなそぶりをすると、途端にそちらを見つめ、にやっとし、視線を私に送ります。
「こっち」
と元気にいい、彼は、何も入っていない私のこぶしの上に手を置くのです。

彼の幼い心は父のいたずらごころに誘導されましたが、今、大人のみなさんは惑わされることなく飴を選ぶことができますか?

 

行動心理学とは

突然ですが、「行動心理学」というものをご存知でしょうか。
言葉は難しそうですが、「人の行動を観察することからわかる人の心理」を指すようです。
ちょっとわかりませんね。
簡単に言うと、「見ちゃいやん」と言われたら見たい気持ちになったり、松竹梅だったら「竹」を選んでみたり、「○○さんがあなたのこと褒めてたよって言われたらいつもより嬉しくなっちゃうような、なんとなくそうしてしまう、そうなってしまう気持ちと行動のことです。

 

WEBマーケティングにおいての行動心理学

この行動心理学、以前より広告に使われており、近年では特にWEBマーケティングにおいて活用されています。
簡単に8つご紹介します。

 

01.返報性の理論

他の人から何かしてもらったときに、「どこかでお返しをしなければ」と感じます。
一生懸命、優しく、丁寧に接してくれる人に対して敵対心を持つことはなく、むしろ、何かその人に対していいことをしてあげようと思ったりするものです。
WEBマーケティングに応用例
→『WEBサイトを訪問したユーザーに、 無料の●●サービスをプレゼント』でその後の顧客化につなげることができます

02.カリギュラ効果

1980年公開の映画『カリギュラ』に由来。
日本の昔話などにも見られます「織っている最中は、絶対に覗かないでね。うん、絶対」「この箱を開けてはいけませんよ。うん、絶対」といわれたのに、結局してしまう、ダメと言われるとしたくなる心の動き。
人間には自分の行動を自分で決めたいという欲求があります。
WEBマーケティングに応用例
→『本気でダイエットに取り組みたい方以外は見ないでください』などの自分で決定させることを促すキャッチコピーに応用できます

 

03.アンカリング効果

アンカーとは船の錨のこと。錨をおろすと船はそのあたりから動けなくなります。
判断や予測が難しいときに最初に提示された数字や条件が基準点となり、自分の判断に影響を及ぼすことをアンカリング効果といいます。
例えば、待ち合わせの時間に遅れたとき、10分はかかりそうなときは、20分くらいかかる、と伝えるとそれがアンカーになり、その後10分で到着すると、予想していたよりも早く来てくれた、と好意的な印象を抱きます。

04.バンドワゴン効果

バンドワゴンとはパレードなどの隊列の先頭にいる楽隊の乗車した馬車のこと。
楽しそうな楽隊車に引かれて、大衆がゾロゾロとついて歩くことから、ついつい「時流に乗る」「勝馬に乗る」行動を指します。
洋服店で店員さんに今の流行は赤ですよと言われ、勧められるままに買ってしまうのがまさにそれ。
みんなも買っているなだ大丈夫、みんなと同じなら大丈夫、みんなと同じになりたい、という気持ちを指します。
WEBマーケティングに応用例
→「大人気!」「今話題!」などの文言をキャッチコピーに使用しましょう。「●●部門●年連続人気NO.1」「おかげ様で販売数●●万個突破」など実績のある数字を使用すれば効果は倍増します。

05.スノッブ効果

スノッブとは、1820年代の経済が発達したイギリス、裕福になった一般人が他の一般人と差別化するために、貴族や上流階級のファッションなどを表面的に真似するようになった人のことをスノッブ と呼びましtら。
人とは違うものを欲しいという気持ちを指し、みんなが持ってるから欲しい、というバンドワゴン効果とは逆になります。
難しいのは、欲しがられたコンテンツが人気が出ると、効果がなくなってしまうことです。
WEBマーケティングに応用例
→コピーや販促イベントに『数量』限定、『期間』限定の設定をしましょう

06.マッチングリスク意識

文字通り、自分に合うかどうかのリスクを不安に思う心理です。
化粧品やシャンプーなど体につけるものは特に新しいものを買うとき少し慎重になりがちです。
だからこそ、その心配を解消することで、購入を促進することにつながります。
WEBマーケティングに応用例
→「お客様の声」「購入から2週間、返金・返品OK」「無料サンプルご提供」「試乗・試着」「初回無料体験」などを示すことで安心感につながります。

07.ウィンザー効果

映画「伯爵はスパイ」でのウィンザー伯爵夫人の一言「第三者の褒め言葉がどんな時にも一番効果があるのよ、忘れないでね」。
非常に身近な心理効果で、口コミなどはまさにそれ。
飲食店、映画など自らのPRも惹かれますが、誰かの「良かったよ」の一言の方がもっと惹かれます。
ただし、あくまで利害関係のない第三者の声が必要であり、情報発信者と店舗が利害関係があると分かった瞬間にその信頼性が極端に乏しくなります。
WEBマーケティングに応用例
→「お客様の声」「口コミ」を今よりももっと重要視し、第三者からの評価をうまく反映させましょう。

08.ザイオンス効果

アメリカの心理学者ザイオンスさん提唱、「何度も繰り返し接触することで、だんだん好感度や評価が高まっていく」というもの。
興味や関心がなかったのに、頻繁に目にすることで警戒心が薄れ、親近感が湧くというのは、ビジネスの他、恋愛にもよく見られます。
とはいえ、その効果のピークは10回で、それ以降は上がらないようです。
WEBマーケティングに応用例
→メールマガジンを利用、特に顧客の問題解決のシナリオを含む「ステップメール」を使って接触回数を増やしていきましょう。

ちょっと長かったですが、以上の8つご紹介いたしました。
ああ~、WEBで普通にあるよねとか、なんとなくうちの広告でもやってる、というものも多いのではないでしょうか。
これらを知り、適切にWEBマーケティングに利用することで、反響を得ることができるはずです。

 

「行動心理学×WEBマーケティング」の功罪

 

今回ご紹介した行動心理学は、人間の行動を真摯に見つめ、たくさんの研究をし、そこから見つけ出されたものです。
その効果は強いため、例えば『ステマ』などのようにWEB上で無意識のうちに惑わされることも増えてきました。
現代において、スマホなどからたくさん降りかかる広告から逃れることはできないと言っても過言ではありません。
つまり、子供だけでなく、大人も、いつの間にか飴の入っていない手を選ばされてしまうこともあるかもしれません。
だからこそ、こうした行動心理学の一部を知ることで、心動かされている自分自身を知り、客観的に、自然に、情報や広告に触れることのできるお手伝いができればと今回ご紹介させていだきました。
落ち着いて飴を選ぶ一助になれば幸いです。

ちなみに、先日、身長が私ほどに大きくなった彼に、「飴はどっちだ」を仕掛け、片方の手をモゾモゾとしましたが、鼻で笑われました。
でも、あの時と同じように、私の片方の手を選んでくれる優しい子のままでした。

(※画像はイメージです。)

〈Copywriter・Hiroaki Munataka〉

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